透析食の食事療法について
透析食
初めに透析食とは?
- 普段の生活を元気に過ごしながら質の良い透析を行うため、栄養状態を良好に保つために食事は大切です。
- 透析食は特別な食事ではありません。しかし、食べ方には工夫が必要な点があります。
- 具体的な個々の食事量などについては、医師や管理栄養士にお尋ねください。
1.バランスの良い食事をする
- 規則正しく食事を摂り、偏食をしないようにしましょう。
- 主食、主菜、副菜を揃えると、食事のバランスが整います。
■主食(ご飯、パン、麺など)
■主菜(肉、魚、卵、豆製品、乳製品などを主とした大きいおかず)
■副菜(野菜を主とした小さいおかず)
血液透析患者さんの食事療法基準
エネルギー | (標準体重1kgあたり)×30~35kcal |
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たんぱく質 | (標準体重1kgあたり)×0.9~1.2g |
食塩 | 6g未満 |
水分 | できるだけ少なく ドライウエイト(kg)×15mL以下 |
カリウム | 2000㎎以下 |
リン | たんぱく質(g)×15㎎以下 |
※標準体重(kg):身長(m)×身長(m)×22
(日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年度版」より)
2.適正なエネルギーをとる
- エネルギー不足は体力や免疫力の低下、貧血、食欲不振などをまねきます。
- 摂取エネルギーの不足が続くと、脂肪や体たんぱく(筋肉・血液)がエネルギーとして使用されてしまいます。その結果、筋肉が減少、体重も徐々に減少し、疲労や脱力感が現れ、無気力になってしまいます。結果として栄養状態が悪くなり、予後にも影響を与えます。
- 活動量に合ったエネルギー摂取を心掛けましょう。
- ドライウエイトが下がっていく方は、油の利用、ご飯の量などが減っていないかご確認ください。
エネルギー補給のコツ
- 主食をしっかりとりましょう
ご飯(中茶碗1杯160g:270kcal)、食パン(1枚60g:160kcal)、うどん(1玉240g:250kcal) - 油脂や砂糖を利用しましょう
揚げ物、炒め物、サラダ(マヨネーズや油の入ったドレッシングを使う)、甘煮など - でんぷん食品を料理に取り入れましょう
春雨、くずきり、片栗粉、コーンスターチ、くず粉など - 低たんぱく・高エネルギーの食品を間食にとりましょう
ゼリー、飴玉、マシュマロなど
※糖尿病のある方は、砂糖や菓子類ばかりに偏らないようご注意ください。
3.適正なたんぱく質をとる
- たんぱく質の摂り過ぎは、尿素窒素(BUN)やリン(P)の上昇につながり、動脈硬化の原因となります。
- たんぱく質の不足は、貧血、浮腫、低たんぱく血症等の栄養障害の原因となります。
たんぱく質の上手な摂り方
- 必須アミノ酸がバランスよく含まれている良質のたんぱく質源を適量とりましょう
肉、魚、卵、豆製品、乳製品など
※生鮮食品を選び、加工食品は控えめにしましょう。
※乳製品はリン含有量が多いのでご注意ください。 - 朝、昼、夕の3食に分けて摂りましょう
1食にまとめて摂取すると、たんぱく質の吸収率が下がります。できるだけ3食に分けてとりましょう。
4.水分をできるだけ少なくする
- 水分の摂り過ぎは、除水量が多くなり、透析中に血圧低下や吐き気などの副作用を起こす原因になります。
- 透析間の体重増加が多いと言われている方は、飲水だけでなく、料理から入ってくる水分にも注意しましょう。
水分を控えるコツ
- 水分の多い料理や食品をとり過ぎないようにしましょう
煮物、汁物、鍋物、麺類、粥、果物、豆腐など - 1日に飲む水分量を決め計量をし、不規則に飲む習慣をつけないようにしましょう
自分用のコップを決めて、その容量で何杯まで・・・と管理しましょう。薬を飲むための水分カウントもお忘れなく。 - 冷たいものより温かいものをゆっくり飲みましょう
喉ごしが良いとつい飲み過ぎてしまいます。熱めのお茶などにすれば少量でも満足できます。 - 塩分をとり過ぎないようにしましょう
次の【塩分を控える】の項をご参考にしてください。
5.塩分を控える
- 塩分のとり過ぎは、血中のNa上昇につながり、喉が渇き飲水を促します。その結果、水分をとり過ぎてしまい体重増加につながります。
- 体内に余分な水分がたまることで、高血圧やむくみの原因にもなります。
塩分制限のコツ
- 加工食品はできるだけ避けましょう
干物、肉加工品(ウインナー、ハム)、魚肉練り製品(ちくわ、かまぼこ)、漬物類、佃煮など - 汁物、麺類は頻度を控えましょう
汁物は具沢山にして1日1杯まで。麺類は汁を残しましょう。 - 調味料は計量スプーンではかる習慣をつけましょう
- 調味料は「かける」より「つける」
醤油やソースなどの調味料は、直接料理にかけず皿に取り、つけながら食べると少量で抑えられます。 - 酸味、香辛料、香味野菜、天然のだし汁などを利用しましょう
- 新鮮なもの、旬の素材を使い、食品本来の味を生かしましょう
6.カリウムを控える
- カリウムは、心臓・筋肉の働きを調整し、細胞内液の浸透圧を一定に保つ働きがあります。透析患者さんは尿が出なったり尿量が少なくなるため、カリウムが排泄されません。そのため高カリウム血症になるおそれがあります。
- 高カリウム血症の症状は、手指がしびれる、唇がしびれる、だるい、胸が苦しいなど。また重篤な場合には不整脈や心不全を起こす原因になります。
- カリウムは様々な食品に含まれます。カリウムが多く含まれる食品を把握して食べ過ぎない、カリウムを減らす調理を行うなどの工夫が必要です。
カリウム制限のコツ
- カリウムが多く含まれる食品をとり過ぎないようにしましょう
【カリウム含有量の多い食品】
果物 バナナ、メロン、キウイフルーツ、ドライフルーツ、アボカド 野菜 ほうれん草、たけのこ、ブロッコリー、かぼちゃ、とうもろこし 芋類 さつま芋(干し芋も含む)、じゃが芋、里芋、大和芋、長芋 豆類 大豆、納豆、きなこ、枝豆 種実類 栗、ぎんなん、アーモンド、ピーナッツ - カリウムを減らす調理を行いましょう
カリウムは水に溶ける性質があります。
野菜や芋類は、小さく切り、たっぷりのお湯で茹で、茹で汁を捨ててから調理しましょう。
生食の野菜は、千切り・薄切り・みじん切りにして、流水に20~30分程度さらしてから利用しましょう。
7.リンを控える
- 透析患者さんは、尿が出なかったり尿量が少なくなるため、リンが排泄されません。そのため高リン血症となるおそれがあります。
- 高リン血症の症状は、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、血中のカルシウムを低下させ、骨がもろくなったり、痛み、かゆみが出現します。また血管に石灰が沈着して動脈硬化を促進する原因になります。
- リンは様々な食品に含まれます。特にたんぱく質を多く含むもの、加工食品に添加物(防腐剤など)としてリンが入っている場合があります。
- リンの摂取量を減らそうとしてたんぱく質の摂取量を過度に減らすと、栄養状態だけでなく、筋肉量や筋力の低下が問題となります。同じたんぱく質の量でもリンが少ないものを選ぶのがコツです。以下の「リン/たんぱく質比」をご参考にしてください。
- たんぱく質を十分に摂取しながらリンのコントロールをするためには、リンを吸着する薬剤が必要となることがあります。
リン制限のコツ
- 「リン/たんぱく質比」が低い食品を選択しましょう
「リン/たんぱく質比」とは、たんぱく質1gあたりに含まれるリンの量を比で表したものです。この数値が10~15以下の食品がおすすめです。
【食品中のリン/たんぱく質比(mg/g)】
<5 5~10 10~15 15~25 25< 卵白
鶏ひき肉鶏もも肉
鶏むね肉
鶏ささみ
牛もも肉
牛肩ロース
豚もも肉
豚ロース
うどん
食パンウインナー
まぐろ(赤身)
かつお
鮭
全卵
納豆
油揚げ
豆乳
ご飯(白米)鶏レバー
ロースハム
魚肉ソーセージ
ヨーグルト(加糖)
もめん豆腐
きぬ豆腐
厚揚げ
そばヨーグルト(無糖)
牛乳
プロセスチーズ
ご飯(玄米) - 「無機リン」の多い加工食品をとり過ぎないようにしましょう
リンは以下のように大きく2つに分かれます。
【有機リン】・・・肉、魚、卵、豆製品、乳製品、芋、穀物など、食品そのものに含まれるリン(体に吸収されにくい)
【無機リン】・・・ハムやソーセージなどの肉加工品、魚肉練り製品、インスタント食品などの加工食品に添加物として加えられた質の悪いリン(体に吸収されやすい)
※無機リンは血清リン濃度を上げやすいので、これらの多く含まれる加工食品に偏らないようご注意ください。 - リンを減らす調理を行いましょう
リンは水に溶ける性質があります。
ウインナーなどの肉加工品や魚肉練り製品は、切り込みを入れる、薄く切るなどしてから、たっぷりのお湯で茹で、
茹で汁を捨ててから調理しましょう。 - 処方されたリン吸着薬は忘れずに服用しましょう
リン吸着薬は、種類により飲むタイミングが異なります(例:食直前、食直後など)。
処方された通りに適切に内服することも大切です。